『ニャーチル』の店主

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 開店前とあって店内には千琉しか人はいない。  千琉のかけ声に他の誰かが答えることもなく、ただ店内には猫がいた。三匹は絨毯に寝そべり、一匹はテーブルの上、一匹はカウンターに飛び乗り、二匹は階段で追いかけっこをし……。それぞれが好きに動いていた。 「ヤレヤレ。相も変わらず朝礼には見向きもしない」  千琉は苦笑いを浮かべると店先に立てる看板を持って外に出て行った。  開店時間は朝の11時。閉店時間は住宅地ということもあり夜の7時頃には店を閉めていた。  千琉は朝早く起きると商店街へ行き店で出す食材を買い店を開ける。  他の猫カフェのように時間制のルールはない。元々普通の喫茶店だった場所に猫が住み着いた。だから千琉は別料金を設けることもせずに、猫アレルギーの人が間違えないようにと看板だけ変えた。
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