真衣の遺体

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 千琉はルキアの方に見向きもせず、両手を組み天井をジッと見つめている。 「そうですねぇ。でも、どうやって家の中に入ります?」  田沼さんが玄関から入れたのだから玄関は開いているかもしれない。けれどもそれは、真衣の遺体が見つかる前のこと。  空き家を徘徊するホームレスや不良のいる猫目町。そんな町だけに今は玄関も厳重に閉ざされているのかもしれない。 『ボク……できるよ』  千琉の足元で一番高く可愛らしい声が聞こえた。そこにいる誰もが声の主を見つめた。 「本当ですか?」  千琉は天井を見るのを止めて足元にいるチャリオットを手に乗せた。そうして顔の辺りまでチャリオットを運ぶと幼く可愛らしい顔をジッと見つめた。 『チャリオット、嘘はダメよ。確かに、私があなたを見つけたのは五軒先の空き家よ。でも、あなたはあの空き家の軒下でぼんやり空を見つめていたわ。ママー、ママーて泣きながらね』  ルキアは毅然とした態度でそう言うとムッとした表情を浮かべた。
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