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「お願い、羽泉さんと安倍さん! 今日の合コン、女の子が足りないのっ! 」
パチン!と、顔の前で合わせられた手。
昼休み、ランチから帰って来た途端、同期の宮沢から声を掛けられた。
課が違ってそこまでは親しくないのに、誘ってくるだなんて珍しい。
ましてや、そういう場に敬遠されがちな自分と真梨香にだなんて本当に深刻な状態なのかもしれない。
「えぇ、どうしよう…… 」
隣の 安倍 真梨香 が、悩んでいるフリをしてこちらを窺ってくるが、本当は行く気満々なのは分かっている。
名前通りに可愛らしい清楚なイメージとは反対に、この子がどんなに肉食系なのかは嫌という程知っていた。
馬鹿な男達が、見掛けでアッサリと騙されるのも。
「ねぇ、くららぁ。 どうするぅ? 」
甘ったるく、伸びる語尾。
羽泉 くらら は、束ねきれずにハラリと落ちてきた髪を耳に掛けると、小さくため息を吐いた。
自分はどちらでも良いというスタンス。
こうやって、こっちに決めさせるのも真梨香の手というのもよく知っていたからだ。
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