溺れる魚は刹那の夢を見るか

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それに、幾ら知り合いだとはいえ、くららは会社で名前で呼ばれることは良しとしたくなかった。乙女チックな母に付けられた名前はそんなに好きではなかったし、名前の意味も。 合コンが嫌だとか取り澄ます訳じゃない。だけど真梨香の言動で、今日は気が進まなくなる。 「宮沢さん、悪いんだけど…… 」 「羽泉さんっ! 」 しかし、断りの台詞は宮沢の大きな声に遮られてギョッとする。 「どうしても、 ど・う・し・て・も、来て欲しいの! お願いっ、助けると思って! 」 ーーーあぁ、呼ぶって言っちゃったのね? 宮沢の必死な態度に、くららは察した。 こういうことが、今まで無かった訳では無かったからだ。 「……分かった。 その代わり、2軒めがあっても 1軒めで帰るけどいい? 」 あからさまに宮沢がホッとした顔をする。 宮沢とは同じ課だし、これで人間関係が円滑になるのであれば安いものだと思うことにした。 「ありがとう! お礼に羽泉さんは会費はいいから 」 けれど、にこやかに笑ってそう言う宮沢の申し出は慌てて断る。 「駄目よ、それは。 私、ちゃんと払うから 」 「遠慮しないでよ。こっちが無理言ってるんだから……、ねっ? 」
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