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「安倍さん……っ! 」
ぱっと明るくなった表情で、くららの脇を抜けていく。
振り向いて目で追った先には、志水と一緒に歩いてくる真梨香の姿が見えた。
「えっ? 国崎さん? 」
驚く真梨香の顔。
「すみません、どうしても会いたくて来てしまいました 」
恥ずかしそうに頭をくしゃっと掻く。
けれど、その可愛いくて仔犬のような、だけど真摯で真っ直ぐな瞳は自分には向けられていなかった。
何が起こっているのか状況が理解出来なくて、くららはその光景を呆然として見ているしかない。
「会いたくてって、そんな……、困ります」
「え…… 」
「突然来られても、私にも予定があるし」
迷惑そうにそう言うと、真梨香は国崎から顔を背けた。
国崎の顔の色が見る見るうちに変わっていく。
「で、でも、昨日は連絡先も聞けなかったし、宮沢さんと同じ会社だって聞いたから 」
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