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信じたくないが、私は何かを間違ってしまっている。
だけど、どこをどう間違ったのかは分からない。
ただ、こんなに見せ付けられれば、分かりたくなくても分かる。
国崎が好きなのは自分じゃなくて、真梨香だ。
でも、それならどうして国崎は昨夜、自分に告白なんかして来たのだろう。
からかわれたのか……、でもそんなことを出来る人には到底見えない。
それとも、誠実そうに見せて、そんな姿を隠しているのか……。
「……おい、アイツいいのか? 」
ぐるぐると考えていたら、志水の声が聞こえて我に返った。
「いいんですよ。約束してる訳でも無いんだし 」
「モテるねぇ、安倍さん。 アレ、彼氏じゃないの? 」
「やぁだ冗談、やめてくださいよぉ。 そんなことどうでもいいから、早く美味しいもの、食べにいきましょうよ 」
ザリッ……と、心臓を引っ掛かれた気がした。
どうでもよくなくなんか、ない。 少なくとも、自分には……。
二人に付いて歩きながら曲がり角を曲がる直前、国崎の方を見ると、男はまだそこに立っていた。
プラタナスの影で、肩を落とした背の高い後ろ姿が見える。
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