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曲がり角を、左に曲がった。
いつもは右に曲がって最短距離を行くが、今日はなんだか気分が重い。
余計な時間を消費して、少しでも回り道したくなったのだ。
右の道は、いつも通っているので慣れていて歩きやすい。簡単にだが舗装もされて、転んだりもしない。
けど左の道は、殆ど人が使わないらしい。
舗装などされておらず、木の根や大きめの石などがあって、足元が不安定だ。
そんな道に苛々が募って。でもそれは、すぐに自分の肩を落とした。
情けなかった。
引きずる様にして歩いていたら、いつの間にか道が開けていた。
どうせまた、いつもの大通りに出てしまったんだろうと顔を上げて。
目を奪われた。
綺麗な茜色だった。他にどんな言い表しようもなく、綺麗だった。
抜けるような青だったはずの空は、気づけば息を呑む程美しい夕陽で彩られていた。
コンクリートで固められたこの街で、見上げた茜は広かった。
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