第二章 俗に言う、前途多難かよ!

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放置なんてしたらきっと精神がもたないね ふぅ、と息を吐いてゆっくりとした足取りで近付き、耳を澄ませる 「…はー…はー…」 自発呼吸はしてるね… 過呼吸の様子はないから一安心かな 少年の容態に少し安堵し、傍に屈み込んだ俺は手を伸ばそうとして、止めた 触れない方が…いいよね 不用意な他者との接触は恐怖心をあおるだけだし 紫「君、君 目を開けれるか?」 「……」 出来るだけ顔を覗き込む真似はせずに閉じている目を見るが、開く様子はない 逆に強く目をつぶるのが見え、意識があるのが分かった 体の方は恐怖なのか、それとも朝特有の寒さなのか、震えていた とりあえず空間から毛布を出し、彼の全身に極力触れないようにして覆う 頭にも毛布をかけて隠す 俺は意識を完全に少年に向ける事で、彼の意思を汲み取ろうとつとめた でなければ、彼の心が壊れてしまう 漠然とだが、そう思った 紫「今から君の体に触る 場所を移す為に抱き上げる 触れていいなら頷いてくれ」 意識があるのは分かっている ならば彼の意思を尊重すべきだろう 襲われたばかりでまともな思考が出来ないのは分かっているし、接触せずに運ぶ事は可能だった 「……………」 見ていなければ分からないぐらいに小さい、本当にわずかに頭が動いた 毛布ごしに彼の体を起こし、全身にしっかりと毛布を巻き付けてから肩と膝裏に手を入れて持ち上げる もう一度、彼の顔を確認する 短い茶髪に色白 顔は幼く、体の線は細い わずかに見えるネクタイの色が黄色、恐らく二年生だろう
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