第三章:9月22日

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「それなら……こうやって」と。安心するために独り言を吐きながら携帯に触る。 僕はメールアドレスを拒否設定にしてみた。 これで万が一にも悪戯ならストレスがかからないし、もし僕の残機だとしたら回避できるだろう。僕は安直にもそう考える。そうしなければ、きっと恐怖という波に溺れてしまうかもしれない。 ――翌朝になり学校に珍しく早く到着する。居てもたっても居られかった。 僕が早く教室にいるのを、優美と春人は驚き僕を囲むように立った。僕は馬鹿にされるのを覚悟で優美と春人に昨日の出来事を話してみた。 対局する二人の表情。優美はまるで馬鹿にするかのように笑って、春人は心配そうに僕の話を聞いてくれた。 「なんていうかさぁ。雄太は想像力豊かっていうか、感受性ありすぎよ」 「優美は黙っててくれ」と、昨日のメールの件もあり少し強く当たる。彼女は少しムッとして押し黙った。 「春人、お前はどう思う?」 「普通はあり得ないよね。単純に偶然なんじゃないかな。そもそもメールで後何回で死にますなんてのがあるとは思えないよ」 「そうそう!そんなのがあったら。寧ろ減らないようにするしかないじゃない?」 「いや、減ってから命の危険が訪れるんだって。だから減らないようになんてできないわ」 「――というか、危険じゃないかな」 「え?」 「私もそう思う」 「何がだよ」 「うん。もし、もしもだよ。雄太の言うとおりにさ。メールでそういうオカルトめいたことが起こってるなら、着信拒否は危ないかもしれない」 「そうそう。もしかしたら危険よね」 二人は真剣にもしもの話を展開してくれたが、僕には理解しづらくて、かえってもやもやとした不安が頭をしめる。 「だから、どういうことだよ。春人、優美」 「だって自分の残機を知らせるのよ。拒否したら残機0になっちゃうんじゃない?」 「うん。優美の言う可能性はあるよね。あとは、もしオカルトなら――だけど。そういう元凶により狙われやすくなるかなって、僕は思うんだよね」 そこまで言うと優美は笑いながら「でもまぁ、気にしすぎよ」と、彼女にしては珍しく励ましてくれた。もやもやした気持ちがあるものの、僕は万が一を考えて着信拒否を解いた。 これで減り続ける数字メールがまたくるかもしれない。しかし、それを止める手立てはない。という点に関しては三人で話し合った結果だ。
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