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他のクラスメイトも笑いながら心配してくれている。僕は周りに心配をかけないように、お茶らけて見せた。クラスメイト達はドジだなと笑ってくれてた。その時、僕の携帯が一瞬だけブルッと身震いを感じる。アラームの長さ的に、どうやらメールが来たらしい。学生服のポケットから携帯を取ろうとすると、始業のチャイムと共に後ろから野太い声が聞こえる。
「おい!神田春人、枦山雄太。授業の時間だぞ。お前らもさっさと席に着け」
そう言ったのはこのクラスを担当する熊のような巨体で威圧感のある先生だ。僕らを含めた皆は、怒られる恐怖から蜘蛛の子を散らしたように、散り自分たちの席へと到着する。
この学校では携帯の持ち込みを禁止している。見つかると容赦なく没収されてしまう。そして下校時までは絶対に返されずに、返される時も職員室に呼ばれて長い説教がついてくる。僕は仕方なく携帯を確認するのを諦めて、先生のショートホームルームに耳を傾ける。話は受験の話だ。
学校が進学校を目指しているせいか、高校二年の秋にもなると嫌でも来年から受験を意識させられる。それは教師も同じで、今からピリピリとした空気が三年の階だけでなく、二年の二階にも響く。僕は胃が重苦しく痛む感覚を覚えた。授業中にクラスメイト達は誰も騒がないで、ただ先生の声の勉強に対する話と時計の音だけが聞えた。
友人の春人はこのままなら推薦をとれるらしい。しかし、僕は既に欠席が多くて、センター試験組として大学にいく必要があった。それもあって日々の勉強は、胃痛を感じる程の重圧を感じる。
とは言っても、大学で何をしたいという訳でもなく、将来のなりたい職業というのも定まってはいない。
先生の熱弁が終わると、そのまま授業が始まった。ただでさえ苦手な数学だと言うのに、内容が理解できない。僕は混乱して目を回しそうになりながら、授業についていこうとする。理解できないとしても授業中は、ただ機械的に黒板に見える数式を追いながら、ノートへと書きこんだ。それにしても授業が頭に入らない。来年は受験生だというのに――。既にこの時期から焦ってしまうが、人生を賭ける受験なんだから仕方ない。
「ねぇ、雄太。いまから気負いすぎない方が良いよ」
「え?何か言った?」
「なんか凄い剣幕で黒板睨んでたからさ、ちょっと心配したんだ。雄太って熱中すると鬼気迫るような顔するよね」
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