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メールアドレスを確認するけど、登録してあるメールアドレスではなく身に覚えもない。考えた挙句に思い浮かんだのは、先ほどのサプライズ誕生日だった。でも、それだと日数が合わない。もやもやした気持ちのままで、僕はそのメールをどうしようか考えた。
「気にするだけ無駄かぁ」
混雑する廊下のなかで、僕がそう呟くと
「何ぼけっとしてんの?」
後ろから聞き慣れた女子の声がした。確かに生徒達が大量に行き来する中で、突っ立っているのは邪魔だな。
僕はそう思い謝りながら振り返る。そこには午後から、春人が言っていた共通の友人である優美に話しかけた。学校の入り口から教室に向かう間に購買部があって、その途中で立ち止っている僕が気になったらしい。
「これみてくれない?」
そういって僕はなんとなく、彼女に≪残り5≫と書かれただけのメールを見せた。優美は興味深げに携帯を見るけど、何のことなのかわからない様子だ。まぁ、当然と言えば当然だろう。
「これっていつ届いたの?朝?」
「おう、確か一限の授業前かな。丁度、転んだ後に来てたんだと思う」
「また転んだの?おっちょこちょい」
そう言うと教室に向かっていく間で優美は、なにか閃いたような顔をする。
その表情は少し意地悪そうな笑顔していた。また何か余計なことでも思い浮かんだろうな。と僕は苦笑いをする。
「なにか思い浮かんだのか?」
「これって、きっと残機よ残機!」
「は?」
何を言ってるんだこの女は……。率直な感想と共に素っ頓狂な顔をしていると、優美は「察しが悪いのね」と僕を小馬鹿にするように嘲笑する。
「だから、雄太の残機よ。ゲームみたいに後、5回で死んじゃうんじゃない?」
「何馬鹿なこと言ってんだよ。ってか冗談でも酷くね?」
「最近シューティングゲームにはまっててさ!そのせいで残り5とかみると
残機にしか見えないのよねぇ」
「そんなゲームオタクだから彼氏もできないんじゃね?」
僕が先ほどの報復にからかうと、優美は怒っていますと体で体現するみたいに、学校に来る途中に買ったパンの袋で僕を叩いた。よくある僕らの日常だ。そして、僕らは教室で本を読んでいる春人の所へと向かった。
春人は僕らや他のクラスメイトの騒音を、気にしていないようだ。その本は復讐の為に友人を、散々な目に遭わせるという内容だったのを覚えている。
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