第二章:9月21日

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監督であろうユニフォームを着た男性が駆け足で坂を上ってきた。歩道に来るとひとしきり謝罪を受ける。人通りは少ないものの僕は恥ずかしくなる。 大丈夫です! 当たってないですから――。そう言うと、逃げるようにしてその場を立ち去る。その後ろを春人は安心したように追ってきた。 「雄太。大丈夫?当たってなくてよかった」 「あ、ああ。携帯に気を取られててさ」 「携帯さまさまだね」 僕は実のところ嫌な予感がしている。先ほどの着信はメールが来た時のバイブだ。恐る恐る携帯を取り出しチェックすると、やはり携帯の無機質なメール画面に≪残り4≫という文字だけが映し出されている。 昨日より数が減っている……? 硬直した僕を察してか、春人は僕の後ろから携帯を覗く。それに気づいて、このメールの話は優美にはしたが、春人には話していなかった。 「なにその数字――。残り4?」 「昨日からなんだけどさ、心当たりのないメールアドレスからさ。この数字が送られてくるようになったんだ。しかも昨日は≪残り5≫だったんだけど、減ってるんだよな」 「へぇ。4日後ってことかな?雄太って確か、もうじき誕生日だし、優美の仕返しなんじゃない?」 「いや、それだと日数おかしいんだわ。誕生日に合わないんだよな」 「んー。何かの約束してる日とかは?」 気になって携帯にあるカレンダー機能をザッと見てみる。しかしこれが日数だとしたら4日後は日曜だ。でも、その日に何か予定があったとも思えないし……。何かの発売日という訳でもない。そもそも自分だけの予定を把握されてたらそれも気持ち悪いな。恋人でもいれば、誕生日とか記念日だとか、忘れてるんだろうと思うけど。生憎、彼女はいないしな。 住宅街の歩道脇に立ち止りながら僕らは考えた。 「思い当たる節がねーなぁ」 「それなら、相手が間違ってメールしてる可能性もあるね。返信してみたら?」 僕は言われるままに「なんなんですか?」とメールを送り返してみた。すると、メールは直ぐに返信された。そこには「MAILER-DAEMON」と書かれていて、良く解らない英語の羅列が書いてある。 「英語わからないんだけど。これってなんて書いてあるんだ?」 「あぁ。そのメールはね、何らかの事情でメールが相手に届いてないってことだよ」
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