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第一章:9月20日
教室の戸を開けたら、そこには僕の気づかない罠があった。その日は遅刻ギリギリで、急いで高校の教室を開ける。クラスメイト達は騒ぎながら右往左往するのを眺めて、ほっとして前に進んだ。しかし足元を見ていなかったせいか、誰が悪いわけでもないけど、ただ誰かが教室の入り口近くに置いていた椅子に躓いて、僕は転倒した。
踏ん張ろうとした脚は、上手く力が入らなかったせいで教室の床に突っ伏すように倒れてしまった。僕は痛みよりも焦りの方が強く衝撃はそこまで酷くはないと思った。しかし思いのほか、大きな衝突音だったのか周りのクラスメート達は、驚いて心配する人もいれば笑っている人もいる。
僕はおっちょこちょいな性格で、どうにもこういう怪我や事故になりかけることが多い。
「集中力が足らないんだ!」 と、両親に心配されながらも怒られたこともある。
「おい、雄太。大丈夫?」
衝撃と顔面を打ったという恥ずかしさで、呆然とする僕に見慣れた男子生徒が手を差し伸べてくれた。彼の顔は心配と呆れが入り混じっている。
そこには中学から今の高校まで仲良くしてくれている友人、春人がいた。彼の細身な身体に支えられながらゆっくりと起き上がる。
起き上がると、目の前に教卓があった。もし、変に力を入れて前の方へ滑りながら転んでいたら、教卓の角に頭をぶつけてしまっていただろう。
そうすれば大怪我になっていたかもしれない……。そう考えると冷汗がこみあげる。春人は「いつもながらに驚くよ」と、少しばかり焦っていた。
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