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けれど、それは私の陰鬱な感情を抑えるどころか、より人の薄汚い所を見る事によって、日増しにましていった。そしてある日、馬鹿らしくなってきてからは、極力は人と関わる事をしなくなった。
それでも私は満足だった。何故なら、この仕事が上手く行けば彼を助けられるかもしれないから。
私は過去に亡くなったクラスメイトを助けられるかもしれない。その一心でこのプロジェクトに、人生を費やすつもりでいる。私の行動で、もしかしたら一人の人が助かるかもしれない。それは、自己満足かもしれないし彼への懺悔かもしれない。
私は、私自身の様々に入り乱れる感情を抑えながら、更に10年ほどの月日をかけて、なんとか電子機器を使って20年前までメールを送れるようになった。
しかしたった20年では到底、彼を助けることなどできない。
私は研究室に入ると、白衣の姿で実験用の器材に囲まれる。
そして、キーボードを使い「優美へ。これはテストメール」とだけ実験的に、私が過去に使用していたメールを送信する事にした。このメールは送信専用だから、過去の私へ届いたかは解らない。でも、そんな事はどうでもいい。今はこのメールが送受信できるようになり、更にはもっと過去に送れるようにする必要があるのだから。
「優美先輩。実験結果はどうでしたか?」
私の後任になるであろう後輩が、若い子が恐る恐る聞いてくる。私は、ふと自分の記憶を思い起こしながら、少し微笑んで成功したと頷いた。
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