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ある日、仕事から帰り家のパソコンをみると。
パソコンに20年後の私からであろうメールが届いていた。何かの悪戯かと思いながらメール画面を、まじまじと観察する。
本文に書いてあったのは、ただ「優美へ。これはテストメール」とだけだった。
差し出しの日付がご丁寧に20年後の2027年からだから20年後か。
私はそれを見た時、パソコンの故障かメールサーバーの異常だと思った。
メールアドレスは私が今まで使っていたメールアドレスとは異なり、複雑な英数字が混じったメールアドレスだった。
帰って早々に化粧も落とさないで、パソコンを立ち上げる私も私だけど、こんなメールを送る方も送る方ね。
もしかしなくても、悪戯。だとしても、ただ名前とテストメールとだけ書かれていることが、私には苦笑いしかでなかった。
「ダイレクトメールなり悪戯なり、もうちょっと上手くやりなさいよ」
私は狭い部屋の中を歩き、ビールを取り出して飲みながら再度メールを眺める。
パソコンの画面に向かって、馬鹿にしたように笑いながら、そのメールを削除ボックスに入れた。
30歳になって、OLの一人暮らしだと、馬鹿する中傷的な内容のメールの方がまだ酒のつまみになるわ。ビールを飲み終えると、化粧を落として寝間着に着替える。
その姿のまま、欠伸をしながら狭い1Rの部屋で二本目のビールを飲む。恋人がいないのも仕方ないわ。別につくろうとして失敗しているわけじゃなく、仕事柄そういう事にプライベートな時間はさけない。何となく襲ってきた寂しさに、私はそう自己弁護を考える。そして、ついつい現実逃避のためにハマった趣味の恋愛映画を見よう。
仕事帰りにレンタルDVD屋さんで借りてきたDVDに没頭することにする。
そしてDVDを見終わると時間は既に24時を過ぎている。私は映画の余韻に浸りながらも、ほろ酔いのまま就寝する。これが何よりも幸せだ。
眠りにつきながらも私の人生はきっと、恋愛なんて甘いことはできない。どうしてかと言われれば、私は今、防衛省の機密的な仕事に就いているから。
特に身の危険があるわけではない。どちらかと言うと、単純な科学的研究に近いのかもしれない。そう酔いと眠気で回らない頭で考える。
男性ばかりの職場ではあるものの――プライベートな付き合いは一切ない、それどころか会話をする事もほとんどない。
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