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精々送られてくるデーターや仕様をプログラムに書き上げて、問題がないかどうかを上司に確認するくらいの会話量だ。
このマンションだって防衛省が借り上げた寮のようなものだから、プライベートだなんて言えない。
その代りに最高のセキュリティがあるから、防犯に対しては万全だ。しかも職場までの道のりが近い。良い条件だと思うわ。
都心だからこそ、街中の暮らしにも不自由はしない。それでも、日々の生活で心の中の何かがすり減るような音がする。
いや!確実にすり減ってるわ。女性としても人としてもすり減っている。
別にブラック企業並みの拘束時間はない。それに休日だってしっかりある。
それなのに――心がすり減っている。それはきっと人との関わり合いが少ないせいだろう。
できることなら、色々な人との関わりを大切にできるような世界で生きたいわ。私は何となく、そんな事を考えながら眠りについた。
――そんな甘い考えから、10年は経っただろう。私は2030年のとある国家プロジェクトに参加していた。
既に年齢はアラフォーになろうとしている。もう結婚願望も薄い。正直、恋愛なんて幻想の物語だとすら思えてくるわ。
化粧を薄くして、年相応を格好に身を包みながら30歳の時と同じ生活を送っている。いや、30歳の時よりも昇進してはいる。でも生活は趣味の恋愛映画が馬鹿らしく思えて、辞めたくらいね。
別に空しさはない。むしろ、職場の会議室につく頃には満たされている。
私は今、目の前に国を動かしている政治家や官僚に提示されているものに見入っている。一般的には夢物語としか思われないようなプロジェクトの資料を読むのに必死だった。
あれから表向き、あまり科学技術は進んでいない。それでも水面下では色々な新しい科学技術が生み出されている。
どれも実験段階だったり、公表するには問題があるものが多い。でも、国益に繋がるようなものが私の元にやってきた。
勿論、守秘義務があるから何をどうとは言えないわ。でも、その中で1つだけ。私が興味を示すものがあった。
それは、タイムマシン――正確に言えば生き物を過去や未来に送るような事はできないものの、割と過去に電子的な操作を行うというのは実験段階になってきている。
これが進めば、きっと次は動物で試して、最終的には人が過去に戻って、歴史の確認も出来るようになる。
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