130人が本棚に入れています
本棚に追加
……なんだかなぁ。
これ、
絵本じゃねーよな。
アンデルセンやグリム童話もよくよく不気味な話があったけどさぁ。
大人の俺は
もう、
ストーリーの結末は分かってるから、
これ、読みきるの、切ないんだけど。
ぱたっと【三色のジュース】を閉じると
俺に葵のことを教えてくれた受付の女性がにこやかに此方を見ていた。
「……あなた、山村さんの恋人?」
「え?
あ、いや。
元?
元でもねーか、知り合いです」
葵と俺との関係を改めて聞かれると、
恋人とかと答えるには微妙だし、
友達とも違うな、と思った。
「先生がその本、もう一冊あるから、
持って行っていいって」
「え?」
「先生は山村さんの作品のファンなのよ」
そんな俺に、
見ず知らずの俺に、
世にあまり出回ってない、ある意味貴重な絵本をくれるという。
「あ、ありがとうございます」
俺が、
よほど欲しそうな顔をして読んでいたのか、
「山村さんに会えるといいわね」
恋人でもない、
友達でもないのに、
葵に会いたくてたまらない俺を憐れんでくれたようだ。
最初のコメントを投稿しよう!