最終話

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小さな島なので、 泊まる宿は限られてくる。 娯楽施設もないし、食堂もほとんどないので、 観光目的ではない俺は、 部屋にいるしかない。 「ここ、日本なんだよなぁ」 長崎も田舎だけと、 のどかさの桁がちがう。 波照間島はとても不思議な島だった。 「お客さん、星を見るなら明け方が一番ですよ」 「そうなんですか?肉眼でも見えますかね?」 「雲の状態にもよりますけど、見えますよ。念のため双眼鏡もお貸しできますよ」 「ありがとうございます……」 島の人はみんな、親切だし。 一見、汚く見えた宿も慣れてくると居心地がいいもので、 夕飯を食べたあと、ゴロッとくつろぎながら、 部屋で【三色のジュース】の続きを読んだ。 ―――″赤(あか)いジュースをのんだミユちゃんのおとうとのケンタくん、 それからみるみるびょうきがなおって 「ただいまー!」 げんきよく、おうちにもどってきました。 おとうさんもおかあさんも、またおしゃべりをしてくれるようになり ミユちゃんのおうちはとてもあかるくなりました。 ミユちゃんももとのいい子(こ)にもどって かみさまに会(あ)ったことも、 ばつの赤(あか)いジュースをのんだことも、 いつのまにか、わすれてしまっていました。 そうしてつきひはながれ、 ミユちゃんはおとなになり、 けっこんをして子(こ)どももさずかりました。 おなじように、 ケンタくんもけっこんをして、 子(こ)どもがたくさんできました。 おとうさんとおかあさんは、 まごがたくさんできて、 とてもうれしそうでした。″
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