最終話

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ここまで読んで、 結末がわからなくなった。 また神さまが出てくるとは思わなかったからだ。 この物語で、 現代の日本にそぐわない登場人物(神は人、ではないけど )がキーポイントになってるのは、 この島を含めた南の諸島には、 独特の神に対する信仰や文化があるからだ。 仏教や神道が広まる前の信仰が、 この離島では残っている。 この「かみさま」は、 祈願や祭礼を取り仕切る神女(シカー)と呼ばれる神職者で、 血縁により受け継がれていると書いてあった。 だから、 女のかみさまは、同じ人物ではなく、 100年の間に交代した、似ているシカーなんだと解釈していた。 著者の葵が、そこまで考えて書いていたかは分からないけれど。 「そろそろ星観るのにうってつけの時間になったなぁ…」 部屋の窓から空を見て、 その、雲ひとつない深い闇に吸い込まれそうになった。 物語の二人がかみさまに再会したのも、 こんな夜だったに違いない。 これ読んだら外へ行こうと決めた。 ″ 「あの時(とき)えらばなかった みどりとむらさきいろのジュース、 覚えているか?」 かみさまにきかれて、ミユちゃんは 100ねんちかくむかしのことを、 うっすらとおもいだしました。 「みどりは、音(おと)のならないがっきになるジュースと、 ……むらさきは、びょうきをもった、小(ちい)さな蚊(か)になるジュース」 おばあちゃんになってしまったミユちゃんは、 赤いなみだをふいて、 おそるおそる、むらさきのジュースをてにとりました。 「これを、のんだら、 おばあちゃんになっても死(し)なない″ばつ″はきえますか?」 これをのんだら、 じぶんもケンタくんも、 もう、これいじょう、だいじなひとたちが、 まごたちが死(し)んでいくすがたを見なくてすむ。 蚊(か)になっても、 だれの血(ち)もすわずに、 うえて死(し)んでしまえばいいとおもったのです。 けれど、 「これをのむことができるのは、いっかいだけ。 ばつをうけて、ねがいをかなえることができるのは、ケンタのほうだよ」 かみさまは、 そのジュースをケンタくんの方へさしだしました。
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