最終話

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「山村? 山村さんて人は私と入れ替わりで辞められましたよ」 そのふくよかな女性は、 年配の患者を誘導しながら、俺を振り返ってそう教えてくれた。 「え、つい、最近?」 沖縄旅行代の返金が終わるとともに、 葵との繋がりがプツッと切れた今、 ここに居ないとなると、 尚更会える可能性は低くなる。 「元々私が産休取ってる2年の間だけって契約だったみたいです」 「そうなの? じゃ、ここ辞めたあとはどこへ?」 「聞いてませんが、多分野波照間島には居ないと思います」 たった2年の為に、 こんな遠くに就職したのかアイツは? 一体なんだってこんなところに就職したんだ? 不可解な顔をする俺に、さらにその女性は、 「履歴書に服役していたこと書いてたらしいです、山村さんって」 「え?」 「面接で、クスリで他人の死を早めたことがあるって、 うちの先生に話してたみたい、 だからこそ、雇うことを決めたって」 「……」 葵の、 心の内を、 一部だけど、 「自分のありのままを受け入れてくれるところでやり直したかったんじゃないですかね?」 ちゃんと伝えてくれた。
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