最終話

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例え履歴書なんかに懲罰の経歴を書かなくても、地元ではきっと人前に出る仕事なら必ず事件のことがわかっていたはず。 葵がこんなところへ来たのはそのためだろうと凛々子も言っていた。 『就職先、あの子に口止めされてるんだよ、身内以外には』 凛々子に電話かけても、 きっと、 葵の行き先教えてくれないかもしれない。 呆然として、 その受付の女性の背中を見守っていると、 「あ」 何か思い出したように、再び俺の方を振り返り、 「そういえば、山村さんて人、 なんか出版したらしいわよ、ちょっと前に」 驚きの報告をしてくれる。 「出版?」 まさか刑務所での日記や事件の暴露本か? 前科ものの書いたやつなんて、 そんな類いしか思いつかねー。 「絵本ですって」 「え?」 「なんて名前だったかしら。結構大人向けの絵本だって評判だったわよ」 ……なんか、 アイツならシュールなの書きそう。 「最近ならまだ廃版とかなってないよな? 思い出して下さい、タイトルとか」 アイツの心を映した物語を、 必死に探した。
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