最終話

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早く読み終われ。 大人げなく、待合室で絵本を読む子供を睨み付けるように見つめていると、 「おじさん、はい、貸してあげる、これ面白いよ」 【三色のジュース】 がとうとう俺の目の前にやってきた。 「サ、サンキュー」 子供が読んでいた絵本を手に取る。 立って読むのもアレなので、年配の患者さんの隣に座り、まだ新しいそれをゆっくりと捲った。 婆さん達の視線が気になったけれど、 そんなことは 絵本を開いて直ぐに吹っ飛んだ。 ―――― ″ニホンでいちばん南(みなみ)にある島(しま)に、 とてもとても なかのいいキョウダイがすんでいました。 ミユちゃんとケンタくん ふたりはいつもいっしょ。 きれいな海(うみ)でおよいだり、 さかなをつったり、 いつもいっしょにあそんでいました。″ 日本で一番南の島……。 波照間島、ここが舞台のなのか。 それなら、 有名な絵本じゃなくても、 ここにならあるわな。 そんで、 このキョウダイのケンタってさ、 もしかして……、 ″ところが、ミユちゃんが10さいになったころ、 おとうとのケンタくんはびょうきになってしまいました ふたりのお父さんとお母さんはとてもしんぱいして、 いつのまにか、 ケンタくんばかりをかわいがるようになりました″ ……もしかして、 俺がモデルなのか?
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