第6章  埋まらない距離(続き)

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第6章  埋まらない距離(続き)

独り言のように呟いた彼は、 おもむろに持参してきたケースから数枚のデザイン画を取り出した。 「まだ、これを聞いていなかったから、 念のために数種類を用意してみたんだけど。 でもこれを聞いてからだと、これが一番かなと思うが、どうだ?」 並べた外箱用のデザイン画の中から、 白地に波のように細く柔らかく「アポロ」色が躍る一枚を 彼の指先が、那々たちの目の前に押し出す。 しかし那々の目には、そのデザインは少し寂しく映った。 そして、立花も何かを感じたらしい。 「確かに、これが一番コピーに馴染むデザインだが、 何か、ちょっと足らないなぁ」 そして、「どう思う?」と那々にも聞いてくる。 「えっ? あの……」 だが、一瞬、那々は口ごもった。
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