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「けど?」
「サトちゃん、大事なことを忘れてるよ。私、ニイッちゃんのこと大好きなんだから。だから、敵がニイッちゃんなら、幾らでも塩を送るよ」
*
「はい、完了」
お姉ちゃんに言われた作業を終え、空になったエコバッグを畳む。
そうしているときだ。
玄関チャイムが鳴った。
お姉ちゃんとニイッちゃんは2階に行ったから、ニイッちゃんの部屋にいるはずだ。
行ったまま降りてこない2人がその部屋で何をしているか、たぶん、たぶん――。
となると、出るのは私しかいないか。
冷蔵庫前からリビングに戻り、リビングのドアから出る。
そうすれば左手に玄関。
見れば、玄関のドアはすでに開いていて、そこからちょうど見覚えのある人が入ってくるところだった。
「あ、悠二さん。こんにちは」
ドアを閉めるのを見計らって入って来た悠二さんにそう挨拶すると、悠二さんの方も「こんにちは」と。
「一華を迎えに来たんだけど」
「うん、聞いてる。だけどちょっと待っててくれる? お姉ちゃんいま上でニイッちゃんと話してるとこだから」
「へえ、弐壱くんと」
悠二さんはそう何でもない顔で言ったけれど、私は、あーこれはとぴんと来た。
お姉ちゃんは悠二さんに愛されてるか不安になって家出してくるけれど、私にすればどうしてそんな不安を抱くのかわからない。
だって絶対この人、お姉ちゃんにすごい独占欲持ってる。
だからいまも、相手は弟だってのに、お姉ちゃんが異性と2人っきりってことにメラッとしたよ、きっと。
それにしてもまったく、お姉ちゃんにしてもニイッちゃんにしても鈍感だ。
好きだって想ってくれてる相手の気持ちをちゃんとわかってない。
ホントまったく、鈍感鈍感。
……まあ私も、全然鈍感じゃないって言ったら嘘になるけど。
そのことに、今日の部活帰り、あの解けた瞬間、気づいた。
「……悠二さん、ちょっと聞いてくれる?」
「ん? 何?」
「悠二さんって私がバスケ部なの知ってるよね? 今日ね、年内最後の部活があって、その帰りはみんなで、終わったぞーって言ったりしながら帰ってたんだけど、そのときね、マネージャーと男子部のキャプテンが急に、みんなの中から消えたの。あ、消えたって言ってもホントに消えたわけじゃないよ」
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