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「タダで教えないって言うのは、考えろってこと! それくらい察しなさいよ!」
『ああそう。わかった。考える』
その言葉で会話は途切れ、そのまま10秒が過ぎ、20秒が過ぎ、30秒が過ぎ――、
「……ちょっと、どうしたの?」
と、思わず。
『どうしたのって、考えてるの』
「そんなに考えないと思い当たらないわけ?」
『そう言われてもね。前回家出された日からの日々を順を追って思いだしてるところだから、もう少し待ってよ』
「……今日家出したってことは、そんなに前のことじゃないわよ」
『そんなのわからないだろう?』
「わかるわよ。だってあたしのことなんだから」
『いいの? そんなヒント出して』
「……いいのよ」
いや、良くはないけどこれ以上待ってられない。ええ短気ですよ、あたしは、ええ。
『そう。じゃあ、急な仕事が入ってクリスマスイヴのディナーをドタキャンしたから。今回の家出の根本の原因ってそれじゃない?』
正解。
でもこうもあっさりと正解されると、ヒントなんて関係なく初めからわかってたんじゃないの? と疑わざるを得ない。
『あれ? もしもーし。ハズレだった? それとも当たり?』
「……当たり。ねえ、ヒントなんて言わなくてもわかってたんでしょう?」
『いやいや、言ってもらわなかったら1回では当てられなかったよ。いま言ったのは思いついたうちのひとつで、他にも候補があったから、ヒント貰わなかったら絞り込めなかった』
「他の候補? 何それ?」
『教えない』
「どうして? 教えなさいよ」
『教えません。だって教えたら、ああそれもあったかってなって、家出の原因に後付けするだろう? それがわかっているのに教えるなんてそんな馬鹿な真似しないよ』
「後付けなんてそんなことしない。知りたいだけだから教えてよ」
『いや、する。そういう気がなくてもね、結局はするもん。俺、一応弁護士ですから、そういうのわかりますよ。だからね、幾ら教えろって言われても教えないよ』
弁護士なんて職業出されてそんなこと言われたら、黙るしかない。
その反面、さらに腹が立つけど。ムカムカムカッ! って。
『さてじゃあ、原因がわかったところで、これから迎えに行くから』
「な、何で原因がわかったくらいで迎えに来るのよ! その前に、先にすることがあるでしょう!」
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