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年内最後の部活を終えての帰り道。
終わりだ終わりだとみんなでワイワイ騒いで進む中、いつのまにかいなくなった存在に気づいた。
どこに? と思って振り返れば、いなくなった2人はそこにいた。
1人はマネージャー。1人は男子部のキャプテン。
付き合っているとは聞いていないけれど、2人はいつもにはない近い距離にいて、少し見ていると、するりと解けた。
その瞬間、心の中で動くものを感じていた。
*
リビングのソファに座ってテレビを見ていると背後で音がし、見れば、ニイッちゃんがドアのすき間から顔を出していた。
ちなみにニイッちゃんは、弐壱お兄ちゃんの略語。
まあ、本当はイッちゃんでも良かったんだ。3歳年上でも見た目同い年みたいで友だちみたいだし。
でもやっぱり兄。そこで『兄』を入れてニイッちゃん。
「おかえり」
「ただいま」
「遅かったね」
掛け時計をちらりと見れば、時刻は午後4時。
朝、私とニイッちゃんは一緒に家を出て、そのとき何気なく「たぶんニイッちゃんの方が早いよね」と言ったら、ニイッちゃんは「たぶんそうだな」と返してきた。
ところが私が帰ってきたのはいまから2時間以上前で、対してニイッちゃんはいま帰ってきた。
だからそう言ったのだけれど、ニイッちゃんは曖昧な笑みを見せるだけで何も言わなかった。
そしてそのままリビングに入ってきて、私の隣に座った。
「? 部屋に行かないの?」
「……ここあったかいし、部屋は冷たいだろうし」
「それ間違い。冷たいじゃなくて寒い」
「え? ……そうだな、確かに、寒い、だな」
「そんなの小学生でも間違えないよ。そんなで大丈夫なの、医学部さん。まさか入試のときだけ神さまが降りてきて受かりました、じゃないよね? で、そのときの引き換えにいまの知能は小学生以下とか言わないよね?」
「かもな」
そう言ってニイッちゃんは、ははっと笑ったけれど、その笑いにまったく力を感じられない。
……まあ、今日は朝から元気があったとは言えなかったけど。
でも朝は、元気はなくとも気合いのようなものを感じられた。
ところがいま、それはまったく感じられない。
ひたすら元気がない。そのことを本人はごまかそうとしてるみたいだけど。
元気がない理由は、……たぶん、そうなんだろうな。
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