レンズの向こう側

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 オレとテツはひと月違いで生まれた従兄弟。  ちなみに生まれたのはテツの方が先。  でも生まれてからの成長はオレの方が早くて、テツはオレを斜め上に見て、オレはテツを斜め下に見る――中学まではそうだった。  だけど高校に入ってから斜めに見る角度がどんどん小さくなっていって、気がつけばお互いの顔を見る目線は逆転していた。  男にとって身長というものは看過できない問題で、テツの顔を見上げることは正直悔しかった。  テツがメガネをかけ始めると悔しさはより増した。  だって似合いやがるから。  テツはもともと賢そうな顔をしていたけれど、身長が伸びるとともにその顔からはガキっぽさが抜けていき、さらに賢そうになった。  そこにそれだ。賢そうに見せるアイテムのメガネの追加だ。  そんなの、ズルいって話じゃないか。  こっちはあべこべに、身長も顔もチョー鈍足成長になったって言うのに。  だから悔しくて、悔しくて、悔しくて、……だけど、それだけじゃなかった。  オレを追い越して、取り残して、どんどん先に大人びていくテツの、斜め上になったその目をうまく見れなくなったのは、他の思いもあったからだった。  その思いの存在にオレ自身気づくまでは少しかかった。  でもその思いはだれにも、テツ本人には増して言えるものではなく、そのまま月日は高3の秋まで進み、その秋からだ。  テツが学校に来なくなったのは。    *  オレの親もテツの親も共働きで、放課後、親が帰るまでの時間をどちらかの家で過ごすとなれば、それは圧倒的にオレの家が多かった。  と言うのも、テツは一人っ子で、オレは3人兄弟。  つまり、にぎやかな方の家を選んだってわけだ。  ちなみに、3人兄弟であるオレは兄弟の真ん中で、姉の一華(イチカ)とは4歳違い、妹の三和(ミワ)とは3歳違う。  ちなみにちなみに、弐壱(ニイチ)というオレの名前は、その兄弟順に由来している。  2番目に生まれた長男。  それが由来。    そういう名前の付け方をした親を安直と言うべきか、何と言うべきか。……でもまあ、悪くはない名前だって思ってるからいいけど。  さて、ではこれで脱線は終了。  話を戻すと、オレとテツは放課後、どちらかの家でとなれば、オレの家で過ごすことが多かった。  ただそれは高3の秋までの話。
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