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視界から消えたケースは、オレの胸に。
そこに強く押し付けていた。
そうしながら思っていた。
在りし日のテツを。
メガネのレンズの向こうにあったテツの目を。
その目を、うまく見れなくなったのは、テツを好きになったからだ。
その自分の気持ちにあるとき気づいて、でも言えなかった。
最後まで、言えなかった。
言ってしまって遠い存在になるのが怖くて。
レンズの向こうに、軽蔑のまなざしを見るのが怖くて。
だから言えなかった。
でも、そのことをいま、こんなにも後悔している。
それが情けない。
テツがいなくなって冷たくなってしまった部屋の中、熱い涙を流して、自分のその後悔をテツに押し付けるように思ってしまう自分が、どうしようもなく情けなく、だけどどうしても涙も後悔も止められなかった。
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