キープ

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「なぁ、お前はどう思う?」 「何がだ?」 俺は聞き返した。 夕方、この教室には俺と、俺の友人の加田木(かたぎ)しかいなかった。空き部屋のこの教室には椅子と机、それと窓が一つだけで何もなく、今はその窓を開けていたので、緩やかな風が教室に入る。俺達は椅子をとって埃を払って座り、たわいのない話をしていた。 「ほら、あれだよ、都市伝説」 加田木はこめかみを二回叩きながら言った。加田木の悩む際の癖だ。 「あぁ、今流行のあれか」 「そうそう、あれ」 都市伝説。この一言だけだと世の中たくさんの種類それがある。しかし、近年新たにそれの仲間入りがあり、テレビ、新聞、雑誌で大きく取り上げられていた。今は都市伝説と言ったらそのことを意味していた。 その内容は至って単純なものであった。眠り病、そう言われる場合があった。なにやら、眠りから目を覚まさない、そういうもねだった。話によると、大きな空間の中にいつの間にか立っていて、そこには樹があり、その下には少年がいる。その少年に何かを問われ、それに答えると、目を覚まさなくなるらしい。 実際、そのような夢を見たという人は後を絶たないらしく、俺のいるこの国に留まらず、世界各国で眠り病は流行り、この都市伝説は語られていた。 眠り病という奇妙な病のたんなる作り話なのか、それとも事実なのか、それを知る術を、まだ誰も知らない。 「まぁ、そのうち飽きる話題だろ。口裂け女とか人面犬、そんなレベルの話だろうし」 「いやぁ、この前、ネットでその話題について書かれてる記事があったんだけど」 極限までだらけたテンションで加田木は言った。まぁ、だらけているのは、俺も変わらないが。 「あの話に出てくる少年が問う内容、そんなのなんだけど」 「うん、で?」 「『永遠』について問われるらしい」 「そうか。それがなんだ?」 「ゆったり話そうぜ。お前は『永遠』ってどう思う?」 「どう、と言われてもなぁ・・・・・・」 俺は返答に困り、顔を歪めた。普段不真面目やる気なし男のこいつが急に真面目に話をするのを、些か気持ち悪くも感じた。 「まぁ、特になんとも思わないかな」 「・・・・・・俺は、永遠ってものがほしいな・・・・・・」 加田木は呟く。その声は消えてしまいそうに小さなものだったが、確立された意思が存在しているのがわかった。
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