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「えーと……どうも、僕の剣でぼろ負けしたのが相当悔しかったみたいですね。直ったオーリーンを使って、戦って欲しいみたいです」
通訳係のリュードが、腰元の鋼の剣をぽんぽんと叩いて言った。
ぼろ負けとまで言われたシダーがギロリとリュードを睨み、リュードは苦笑いを浮かべる。
リーガルはわずかに唸っていたが、やがて、「わかりました」と答える。
「あの剣は、私の知り合いの賢者様が作った物なのです。彼に話を聞けば、あるいは……」
「賢者?」
「ええ、叡知の賢者様と呼ばれる方です」
チェルシーからアップルパイを受け取りながら、リーガルは頷いた。
「ちょうどこの近くに、賢者様がよく訪れていた村がありますから、そこを訪ねてみましょう。もしかしたら、オーリーンを修復することができるかもしれません」
ですが……と、リーガルは、ちらりとシダーを見た。
「鋼の剣で、すでに私に負けているのですから、完全体のオーリーンでは、相手になるどころか、最悪の場合、死を覚悟していただかないと……」
「……ッ貴様!」
シダーは素早く立ち上がると、リーガルに向かって炎の塊を飛ばし始めた。
グアン!
そのひとつが大鍋に当り、溢れそうになる中身をリュードが必死で押さえる。
「シダー、食べ物は粗末に扱ってはいけませんよ」
軽々と魔法をかわしながら、リーガルはアップルパイを一口かじった。
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