第9章 【鉛の心臓】

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「えーと……どうも、僕の剣でぼろ負けしたのが相当悔しかったみたいですね。直ったオーリーンを使って、戦って欲しいみたいです」 通訳係のリュードが、腰元の鋼の剣をぽんぽんと叩いて言った。 ぼろ負けとまで言われたシダーがギロリとリュードを睨み、リュードは苦笑いを浮かべる。 リーガルはわずかに唸っていたが、やがて、「わかりました」と答える。 「あの剣は、私の知り合いの賢者様が作った物なのです。彼に話を聞けば、あるいは……」 「賢者?」 「ええ、叡知の賢者様と呼ばれる方です」 チェルシーからアップルパイを受け取りながら、リーガルは頷いた。 「ちょうどこの近くに、賢者様がよく訪れていた村がありますから、そこを訪ねてみましょう。もしかしたら、オーリーンを修復することができるかもしれません」 ですが……と、リーガルは、ちらりとシダーを見た。 「鋼の剣で、すでに私に負けているのですから、完全体のオーリーンでは、相手になるどころか、最悪の場合、死を覚悟していただかないと……」 「……ッ貴様!」 シダーは素早く立ち上がると、リーガルに向かって炎の塊を飛ばし始めた。 グアン! そのひとつが大鍋に当り、溢れそうになる中身をリュードが必死で押さえる。 「シダー、食べ物は粗末に扱ってはいけませんよ」 軽々と魔法をかわしながら、リーガルはアップルパイを一口かじった。
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