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「本当だ、とても美味しいですね」
「えへへ、そうかな?」
地面を穿つシダーの雷撃魔法など全く気にしない様子で、チェルシーは頬を染めて俯いた。
「はい。チェルシーの作る物は何でも美味しいですよ」
「リーガルにそう言ってもらえると嬉しいな……」
「2人共、のろけてないでどうにかしてください!」
シダーが放つ怒濤の魔法攻撃を全て避けるリーガルもリーガルだが、一見手当たり次第に魔法をぶっぱなしているように見せ掛けて、チェルシーの周囲だけ、ほぼ無傷の状態を保たせているシダーもなかなかのものだ。
リュードの悲痛な叫びにようやく我に返ったチェルシーが、慌てて腕を掲げた。手首に嵌められた、細い銀色の腕輪が光り、赤い魔法文字がぽっと浮かび上がる。
「……っ!」
同じように、シダーとリーガルの腕に嵌められたそれぞれの腕輪が光を帯びたかと思うと、シダーが手にしていた杖が突然消えた。発生途中だった魔法の光塵も、腕輪の中に吸い込まれるようにして消える。
「ちっ、いまいましい」
何度か腕を振っていたシダーだったが、諦めると、ふて腐れたように腕を組んだ。腕輪はシダーの手首に合わせて作られたかのようにぴったり張り付いている。
「それ、スティラー作の拘束用魔具ですよね。シダーさんの魔力を抑え込めるなんて、凄い力だなぁ」
チェルシーの腕をまじまじと見ながら、リュードは感心したように言った。
「でも、どうしてチェルシーとリーガルさんも着けているんですか?」
「要するにエネルギー源であろう」
顔を見合わせる2人の代わりに、シダーが口を開いた。
「本来の拘束用魔具は、被拘束者の魔力から、拘束するためのエネルギーを供給するがゆえに、重要な基板までもが被拘束者の手元にあったからな。
一定量以上の魔力を集中してそこへ流し込めば、破壊することなど容易い仕様になっていた。しかし、エネルギー源を第3者から供給することになれば、俺が貴様らを殺さぬ限り、魔具は外れる事はない」
「……だ、そうですよ」
「リーガルさん、爽やかに笑ってますけど、全然分かってないですよね」
リュードは呆れ顔をリーガルに向けた。隣にいるチェルシーは、そもそも最初から話を聞く様子もない。
「まあ、いくら考え抜かれた物であっても、やはり不具合はあるのだが……」
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