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鬱蒼とした森の中から、鳥達が羽ばたいていった。
太い幹が立ち並ぶ木々の間に身を置き、リーガルはぶらりと両手を降ろした格好のまま、その場に立ち尽くしている。
瞼は軽く伏せ、ゆっくりと呼吸を繰り返し。
さわさわさわ……
風が吹き、瑞々しい青葉が揺れる。
その涼しげな音の中から何かを聞き分けようとして、リーガルは耳を澄ませていた。
……カサリ、
自然とは違うその異音を耳にしたリーガルの右腕が、腰元に下がる剣の柄へと伸びた。
刹那。
予想とは正反対の方向から、立て続けに、紅蓮の刃が空を切って飛んできた。
リーガルはそちらにちらと目を向けると、2歩、今いたばかりの場所から後退する。
トストストスッ!
さっきまでリーガルが立っていたその場所目掛けて突き刺さる魔法の炎にはもう目もくれず、リーガルは柄を握ると、すらりと剣を引き抜いた。
刀身およそ1メートル。鈍色に輝くその剣は、旅人ならば誰でも一度は手にしたことのある鋼の剣だ。
リーガルはそれを無造作に左手に持ちかえると、木々の間を縫って走り出した。
それをきっかけにして、今度は地面と平行に、薄い氷の刃がリーガルの背を追った。
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