第9章 【鉛の心臓】

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ヴォン! 唸るような音と共に、四方の空間が渦を巻き、そこから稲妻が現れた。 稲妻は真下ではなく、リーガルを目掛けて真横に走る。 リーガルは、手にした刃を地面に突き立てると、その柄を踏み台にして高く跳び、マントで体を覆った。 靴先が柄から離れた途端、激しい閃光が弾け、収束した稲妻は全て、刃へと落とされる。 少しだけ黒ずんだ剣を再び掴むと、リーガルは突然、木立の間を疾走し始めた。 途中、繰り出される魔法の炎を剣の切っ先で爪弾き、向かう足運びには躊躇いなどない。 眼前目掛けて飛んできた氷塊を、首をわずかに傾けることで巧みにかわすと、リーガルは足元の倒木を踏んで、突然真横へと進路を変えた。 剣を右手に持ち、左手に掴んだ剣の柄を木に突き立てて、やや強引に、再び進路変更する。 その大木に雷が落ち、ばりばりと激しい音をたてたかと思うと、木は見る間に真っ二つに裂けた。 そんなことなど気にする様子もなく、リーガルは、ようやく見つけた“獲物”の姿に、顔をほころばせた。 距離は、およそ100メートル。 木々の緑の中で、はっきりと見分けのつく金髪と、白いマント。 見つかることを恐れていないのか、すらりとした細長い体躯は、背筋がしゃんと伸びている。 リーガルが気を抜いた、その一瞬の隙。 足元に発生した細い光の糸が、リーガルの左足を絡め取った。 「おっと、」 思わず小さく声をあげ、リーガルは前のめりになる。
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