第9章 【鉛の心臓】

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それを好機と、リーガル目掛けて一斉に魔法が放たれた。 たちまち辺りに爆音が轟き、視界は全て砂埃で覆われた。森の木々は軒並み倒れ、周囲は草1本、花びら1枚さえ残らない。 それでも、しばらくの間魔法は止まらなかった。 ……ようやく、森に静寂が訪れた。 視界を遮る物は、すでに何もない。 「…………どこだ」 この程度の攻撃で死ぬような相手でない事は、既に承知の上だと言わんばかりに、シダーは杖を離すこと無く、辺りに気を配る。 ……その時、シダーは異音を耳に捉え、眉をひそめた。 風を切るような、細い音がどこからか聞こえてくる。 「……上か!」 瞼にかかる影に気付き、シダーは杖を振り上げる。 何かが、物凄い勢いで落下してくる。 シダーが小さく呟くと、体を取り囲むように、半球型の防御壁が現れた。 ガンッ! その何かが防御壁にぶつかり、人ならざる動きをして結界の上を転がると、どさりと地面に落ちる。 砂埃を巻き上げて落下したその物体を横目で見たシダーは、息を飲んだ。 それは、律儀にもリーガルのマントを付けた、1本の丸太だった。 「クソ……!」 再び杖を構え直すシダーの真後ろ。
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