第9章 【鉛の心臓】

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異変に気付く間も無く、シダーは後ろから押さえ込まれた。 もんどりを打って転がるシダーの上に素早く跨がると、リーガルは剣の鞘でシダーの首元を押さえつける。 「……ぐッ……」 呼吸のできないシダーの鼻先に。 リーガルは、ぴっと指先を突き付けた。 「……はい、これで“詰み”です」 爽やかな笑顔を浮かべて、リーガルは言った。 鞘を掴み、苦しそうに首を振る。 そんなシダーの様子をニコニコと笑いながら見ていたリーガルは、軽い動作で、鞘を腰に差し直した。 激しく咳き込むシダーを一瞥すると、囮にしていた木の幹から、マントを外しにかかる。 「……さあ、今日はこのくらいにして、ご飯にしましょう」 埃を払ってマントを肩に掛け、イストルランド兵である証となる“四方銀槍”のマント留めでそれを留めると、リーガルは明るく言った。 「待て、まだ終わってはおらん!」 「ダメです」 子供のイタズラを嗜めるようにそう言い、リーガルは眉をしかめる。
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