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2人がテントに戻ると、食事の用意をしていたチェルシーと、リュードの姿があった。
シダーは木陰に腰を下ろし、リーガルは、装備していた鋼の剣を腰から外す。
「ありがとうございました。やはり使いやすいですね」
好青年らしくにこやかに微笑むと、リーガルは、リュードに鋼の剣を手渡した。
「いえいえ。それより、こんなのでよくシダーさんと戦えますね」
焦げ目の目立つ剣を受け取りながら、リュードは驚いたように言う。
先程の金属音の正体である、フライパンとお玉を両手に装備し、鎧の代わりに白いエプロンを身に付け。
料理係のリュードの傍らに置かれた大鍋からは、コンソメのいい香りが漂っている。
「だいたい魔法相手にどうやって戦ってるんですか?」
「どうって……?」
質問の意図が分からなかったらしい。リーガルは首を傾げるも、口元の笑みは絶やさない。
「氷だったら普通に剣で弾いたり、雷は、金属の特性を利用して受け流したり……かな。特別な事は何もしていませんよ」
ホカホカと湯気のたつスープをカップによそって手渡しながら、リュードは、それを聞いて呆れたように笑った。
「そういうのを“特別”って言うんですよ。いいですか、普通の人は魔法でできた氷は弾けませんし、ましてや、雷を剣で受け流す、なんてできないんですからね」
「そもそも貴様、あのデカブツはどうした?」
木の根元に座ってパンをかじっていたシダーが、ふて腐れたように言った。
「先日、柄の部分が取れてしまったので、今は使えないんですよ」
「エー……ツカえないなぁ」
ぽつりと呟くリュードを無視し、シダーは眉間の皺を深くする。
リーガルが指差す先を見ると、巨大な抜き身の刃は、確かに柄の部分がなく、その重さで半分以上が地面に埋まっている状態だった。
「元は巨大な剣だったんですが、数年前に折れてしまって。本来の柄の部分は、今でも行方不明なんです」
「応急処置で、鍛治屋さんに柄を作ってもらったんだよね」
焚き火の前で何かをやっていたチェルシーが、リーガルの言葉を継いだ。
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