第9章 【鉛の心臓】

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鉄板の上で何かを焼いていたのだろう。 熱された鉄板の上には、カードサイズのパイ生地がいくつか、香ばしいきつね色になっている。 「ちっ、俺が鋼の剣ごときに負けるとは……」 そうぶつぶつと呟いているシダーの元へ歩み寄ると、チェルシーは、手にしたそのパイ生地を、シダーの目の前に差し出した。 突如漂ってきた甘い香りに、シダーはハッと顔をあげる。 「リンゴ好きなんだってね、リュードから聞いたよ。これ、食べてみて。私の得意料理なんだ!」 チェルシーから出来たてのアップルパイを受けとる。 「有り合わせの材料だから、味の保証はできないけど」 「お前が……これを?」 「うん!」 シダーは何度かチェルシーと、手元のアップルパイを見比べ。 ……が、シダーはそれを食べずに、再びチェルシーを見上げた。 「リュードに……何を聞いた?」 何故か額に脂汗をかいているが、チェルシーは全く気付いていない。 「え?だから、シダーがリンゴ好きだって……」 「“俺が”、だな?!」 「……うん、……?」 「“シダー・スプルース”が、だな?!」 「う、うん。どうしたの?」 「なら良かろう!」 安心したように言うと、シダーは湯気のたっているアップルパイをサクリとかじった。 そのまましばらく無言で、もぐもぐと口を動かした後、 「……うむ、まあまあだ!」 普段よりテンション高く言い、シダーは眼鏡を光らせた。 「……相変わらず、これだけは旨いな」 「え?シダーに作ったの初めてだよね……?」 シダーの呟きに、チェルシーは首を傾げる。 「ち、ちがう!アップルパイという料理そのものが旨い、という意味だッ!」 シダーは慌てて否定すると、残りのアップルパイを口の中に押し込んだ。そのままの状態で、シダーはもそもそとリーガルに喋り掛ける。 「そんなふぉほよりも、ひっふぉふの。ひふぁまの得物がそんななりでは、俺のふふぁいどが許さん。どこぞでそのデカブツを直すふぉほはできんのか?!」 「…………はぁ……?」
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