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じーっと見つめる夏実に優花は慌てて話題をそらす。
「やー実は朝からお母さんとケンカしちゃって。本当毎日毎日口うるさくてさー。」
「……そっか。それで変だったんだぁ。」
「そうそう。昨日の夜もちょっとテレビ見てただけで勉強はー?とか。もう高校生なんだし、まあ3年だけどさ。
進路はちゃんと考えてるの?とか。まだ早いよ、ねぇ?」
「うん、そうだね。まだ半年くらいは遊んでたいよね(笑)」
「そうそう。」
話題をそらせて私はほっとしていた。
夏実が少し寂しそうに笑っていたことに気づかないまま。
それからの私は初めこそ夏実の話を真剣に聞いたりなるべく自分のことばかり話さないようにしていたが、3ヶ月も経つ頃にはメールのことなんてすっかり忘れていた。
そんなまだ梅雨の残る7月の初めのことだった。
夏実のお母さんが亡くなった。
癌だった。
担任と仲の良かった友人数人と夏実の家へ向かった。
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