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合宿当日、海へ来た俺たちは、そこで会ったんだ。
講師として来ていた車いすの「三崎周吾」に…
成川は固まっていた。
「もしかして三崎って…」
あの日のことを思い出した俺は、小さな声で聞いたら、そうって返事が返ってきた。
なんだこの偶然。
講師が車いすってことで、生徒達もざわざわしてて。
三崎講師は語り出したんだ。
歩けなくなったのは数ヶ月前のことで、大切な人を守った結果だからこうなったことに悔いはない。ただ悔しいのは、その大切な人が俺のせいで心を閉ざしたこと。リハビリ間に合わなくて車いすだけど、みっちり勉強たたき込むからそのつもりで!って。
大切な人って成川だよな。
授業なんて、あんま頭に入らなかった。
それは成川も一緒だったらしく、見抜かれていた俺たちは、夕食後の自習時間に三崎講師に呼び出された。
そして成川と三崎講師が話す時間を作れたんだ。
ずっと黙っていた成川も、三崎講師の話に心が溶かされたんだろう。
すごく優しい表情になっていった。
俺は聞いていただけだけど、大切な人っていうのは2人いたんだ。
1人は三崎講師の妹のことで、もう1人は成川のことだった。
成川は、自分が行かなかったから三崎講師がこうなったと思い込んでいた。確かにそうだった。三崎講師とその妹と待ち合わせをしていて、妹に絡んできた奴らともめたのが原因だった。
成川の女が他の男と遊んでるって因縁つけられたらしい。
もし少し早く行っていたら、絡んできた奴らと会わなかった。
でも後悔はしていないって。
あれ以来妹は引きこもっているから、成川にまた遊びに来てほしいって言ってた。
三崎講師は、2人を守れたから嬉しいって。
俺のことを、成川のよき理解者だと思ってくれたらしいし。
あのメールは、これを言いたかったのかな。
そう思っていたら、メールの続きが来た。
『海で何があるのかは知らない。でももし山へ行っていたら、成川は登山道で自ら滑落の道を選んでいたんだ。成川は全身打撲で生死の境をさまよった後、亡くなった。それをどうしても避けたかった。これから先は俺も知らない。ありがとう』
と…
海で何があるか知らなかったのかよ。
でもまあ結果オーライってこと?
これできっと将来、まだ成川は生きてる。俺たちといるんだろう。
今船旅してこの孤島合宿に来てよかった。後悔よりも航海を選んでよかったぜ。
そう思った。このときは。
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