クミコ、君を乗せるのだから

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秋吉久美子という女優は不思議な人だ。 1974年の事だった。 日産からチェリーF-Ⅱがデビューした。 発売に際してコマーシャルのキャラクターに採用されたのが秋吉久美子だった。 記憶が違っているかもしれないが、僕のイメージでは、その時のクミコは、麦わら帽子を被り、首を傾けてこれ以上はないと思える愛らしい表情を見せていた。 八重歯が覗いていたような気がする。 チェリーF‐Ⅱについては、後でお話しするが、当時の日産デザインそのものといった形状で、初代チェリーのFFレイアウトを継承してA12型エンジンの軽快な音を響かせるものの、どこか着ぶくれしたような印象を与えたものだ。 さて、チェリーに乗せるクミコちゃんの話だ。 ブラウン管で純情そのもの笑顔を見せた彼女は、ほぼ同じ時期に日活映画に出演した。 「妹」というタイトルの異色(?!)映画。四畳半フォークの旗手であった「南こうせつとかぐや姫」の楽曲をもとに作られた作品だった。 その映画の中で、クミコはなんとフルヌード姿を披露する(した)というのだ。 僕は映画は見なかった(見られなかった?)が、週刊誌のグラビアでそのシーンを見た。 美しいとは思うのだが、チェリーのキャラクターの彼女とのあまりのギャップに、衝撃を受けた。 大きな胸が、生々しかった。 日産は何を考えているんだ。こんなこと、許されていいのか。清純なクミコを乗せて走るはずじゃなかったのか。 僕は突然、日産自動車の宣伝部員になったかのように、憤慨した。
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