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クルマの外寸というのを考えてみたことがあるだろうか。
いまでは小型の自動車に5名乗車してもある程度の距離を楽しく走れる。少しは窮屈だと文句を言う方もいるだろうけれど。
気がついていないかと思うが、かつてのクルマに今あなたが乗ったらその狭さに驚くに違いない。
まるでミニカーの世界に紛れ込んだような、そんな感想を持つに違いない。
というのも、昔はクルマの幅サイズに制限があったのだ。1.6メートル未満。これが普通小型車(5ナンバー車)の条件とされていた。
これを超えると中型車とされて税金ばかりか有料道路の通行料金まで急に上がった。
そのうえ、アメリカ車のデザインの派手さに憧れる人が多いものだからクルマのデザインは背が高いとカッコ悪く見られた。
背が低いデザインのクルマが人気を呼んだ。しかも国産車は上記理由で幅が狭いのだ。(小型車と中型車の違いを排気量で記憶する人は多いと思うが、実はサイズの制限こそが大きな違いだった)
とにかく、乗車してみるとわかるが、本当に車内が狭い。クーペやハードトップに乗るとフロントガラスと顔までの距離が近いし、前席のガラスの端にある柱(Aピラーという)までの
距離は、少し動くと頭をぶつけてしまうほどだった。
後席にいたっては悲惨なものだ。足を伸ばして座る事は不可能だから、お尻を少し前に出して足を曲げて抱きかかえるような恰好で乗ることになる。
国産クーペの後席は長時間のドライブには敬遠された。乗るなら助手席にとなるわけだから、助手席の価値が絶対的に高くなって彼女の専用席ということになっていくのだ。
ただ、狭くていい事もある。
幅が狭いという事は、運転席の彼と助手席の彼女との距離が異常に近い。
彼がフロアシフトや、サイドブレーキに手を伸ばす度、彼女の膝や腰のあたりに触れそうな微妙な距離。
そこから親密な関係が生まれて不思議はない。自動車が贅沢な動く個室とされていたが、個室の意味はここでもまた強調されたのだった。
とにかく、愛車の助手席が大切な彼女専用席だったことは(今以上にもっと)理解いただけただろうか。
こんな時代に「クミコ」はチェリーF-Ⅱの助手席に乗せたくなる彼女代表選手として選ばれたわけだった。
チェリーと秋吉久美子。
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