~1998~

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物心ついた頃から切り刻みのサムと呼ばれ、今年で20年以上がたっていた。 そんな中で笑われたことはあっても、笑いかけてもらうことなんて、今まで一度もなかった。 今日のこの時までは。 大泣きしていたはずなのに、赤ん坊の顔はしっかりと俺の顔を見たまま微笑んでいた。 笑っていた。 きっとこの顔こそが【満面の笑み】というのだろう。 遥か遠くから、パトカーの音が聞こえた。 きっと銃声を聞いた近くの住民が通報したのだろう。 逃げなくては。 今も俺に笑いかけている赤ん坊を、タオルケットごとくるんで俺はその部屋を後にした。 これが、この出会いこそが、強盗兼殺し屋として生きてきた俺を大きく変えた出来事だった。
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