2人が本棚に入れています
本棚に追加
_________
あの町を離れ、いつもの小屋に帰ってきた。
思いがけない荷物を持って。
クローゼットで見つけた紙袋には、やっぱり金塊が入ってた。
それは想定内だったが、想定外だったのがタオルケットに包まれた赤ん坊。
なぜか殺すことができなくて、でも顔と姿を見られたからには生かしておく訳にもいかず、俺は赤ん坊を持って帰ってきてしまった。
赤ん坊は出会った時は散々泣いていたが、今はすやすやと寝息をたてて眠っている。
なぜ、あの場で殺さなかったのか。
なぜ、あの場で殺せなかったのか。
わからない。
今まで思うがまま自由に生きてきた俺には、自分自身がとっている今のこの行動が全くわからなかった。
今だって殺そうと思えば簡単に殺せる。
まして相手は抵抗することもできないし、眠っているのだ。
いつも通り振りかざしたナイフを、心臓にめがけて振り下ろすだけ。
それだけだ。
ナイフを手に取り、再び赤ん坊めがけて高く振り落とす。
が、ナイフはただただ空を切り裂くだけだった。
最初のコメントを投稿しよう!