~1998~

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さぁ、ここからが本番だ。 研ぎ澄ましていた神経を、更に研ぎ澄まして扉を開ける。 思った通り、家の中は立派だった。 天井からぶら下がった立派なシャンデリアに大きなテレビ、大人が隠れられそうな暖炉に、高価な美術品の数々、そしてクリスマスツリーの下には色とりどりの包装紙にくるまれたプレゼント・・・ 極まれに、だが、入ってみてから落胆するような家もある。 外観だけが素晴らしく、中身が伴わない家だ。 だがそんな家に入っても、俺の狙いは変わらない。 大広間を抜けカーペットが敷かれている階段を昇っていくと、これまた立派な壺が飾ってあった。 作られたのはきっと今から五百年程前、時価三千万円程だろう。 目利きには自信がある。 今まで様々な美術品を見てきたからだ。 指輪やネックレス、水晶、天然石、壺や器、絵画、掛け軸・・・ この世には美しいと言われ値の張るものが山のようにあるが、俺にはどれもちっぽけに見えた。 かけたり壊れてしまえばたちまち価値は半減する。 そんなものに金を費やして、いったい何になるのだろう。
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