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◆◇◆◇◆
「バカ! ブラックのバカバカ!」
怒りに任せ、サラはずんずんと足を進める。
何処へ行く訳でもないのだが、そうする事でしか今の感情を紛らわせる術を知らない。
「こんな事、リサにも言えないっ……!!」
酔った勢いでブラックに襲われました、だなんて。
ブラックといつかそんな関係になるかもしれないという思いはサラの中にもあったが、酔っ払った状態でなど、冗談ではない。
ブラックは酒に弱い。
深く酔っ払ったなら一切の記憶を失ってしまう。
それを承知の上で、彼は酒を口にしたのだろうか。
「ブラックの、バカっ……!」
彼の事が大好きだからこそ、苛立ちが募る。
「……ブラック隊長も可哀相だよなー」
(え?)
歩みを止めぬサラの耳に届いたのは、ブラックの所属する隊の隊員の言葉。
何となく気にかかり、不粋だとは思ったが立ち聞きを試みた。
「せっかく帰ってきたのにさ、あんな事になって」
(あんな事?)
「確かに。けどこればっかりは俺達が手助けできる事じゃないしな」
「すべてはサラ様しだい、ってか」
「だな」
ブラック、サラ。
会話の内容こそわからないが、彼の重要な事に自分も関わっているのは確かだ。
そんな覚え、微塵もないが。
「今頃やけ酒してたりして」
「あぁ、してそー。でないとブラック隊長には無理っぽいもんな」
(やけ酒? さっきの事?)
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