太陽のキモチ。

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 彼らの言葉で、事態のピースがひとつずつ埋まっていく。  ブラックは何か重大な理由があって、先程のような行動を取ったという事か。 「20歳まで童貞にだと妖精になるって、冗談じゃないよなー」 「なー。エッチしなかったらこの世から消えちゃうんですか、みたいなね」 (――え)  俺なら信じないわー、と笑う兵士達の後の言葉はもう、サラに届かなかった。  ここ数日様子のおかしかったブラックの姿が、彼女の脳裏に浮かぶ。 『オレは――もうどこにもいかない』  思い詰めた表情をし、そう呟いた彼の姿が。 「私……なんてこと――」  彼は必死にサインを送っていたのではないのか。  己が直面した危機に。  それに気付かず、サラは彼から逃げ出してしまった。  いつもは決して手を出さぬ酒を飲んでしまう程、追い詰められた彼から。 「……ブラックのバカ! ひとりで抱え込まないでって言ったのに!」  サラは来た道を再び引き返した。  すべてを一人抱え込んだ彼の元へ戻る為に。 「……」 「……」 「……なぁ、」 「今の……サラ様、だよな?」 「あ、あぁ」 「今の話、信じたと思うか?」 「……」  まさか。信じる訳がない。  そう言い切れないのは、相手がサラだから。  人を信じ、疑うことを知らぬ彼女が今の話をどう思ったか。 「や、さすがに信じないだろー」 「だ、だよなだよなー」  兵士達は見くびっていた。  サラというド天然の姫を。 .
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