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威圧的な城門に竦んだ足。何用かとお尋ねになった門番の御方に心臓が大きく跳ね、一瞬で縮んでしまいました。
この先、団子屋で働く町娘には敷居が高過ぎるので、殿からのお城へのお誘いをお断りしたのですが…つい先日。
「此奴しかねェから、早く届けに来いよ」
そう仰り、愛用の煙管を強引に私の手に乗せて帰ってしまわれました。
そして、操り人形の如く糸を吊られ伸びた背筋でぎこちなく隙の無い手入れが施されたお屋敷を歩いております。
綺麗に磨き上げられた先の見えない廊下に影が差し、すれ違うお侍様からの視線は居心地が悪く帯を締め過ぎたような息苦しさを感じ次第にゆっくりとなる足へ視線は落ちてしまいました。
「遅い」
風が運ぶ声に顔を上げ、見えた殿のお姿に嵌められたと気がつきました。
顔を出したお日様の下、燻る紫煙が空に吸い込まれていきます。
ふわり、ふらり。
喉を鳴らし笑う殿の元まで、あと少し。
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