危ない奴

5/5
前へ
/7ページ
次へ
午後6時……53分 チャイムの音に顔を上げると、もう約束の時間であることに気づいた。 開いてるぞと声をかけると、大きな買い物袋を2つ提げた千尋が入ってきた 「なんだよそれ」 「飯作ってやる。いつもろくなもん食ってないだろ」 冷蔵庫を勝手に開けて、「うわほぼ空じゃん」と文句を言いながら、手際よく材料を詰めていく 「頼んでねぇけど、助かる。金は?」 「いいよ俺も食うから」 卵、鶏肉、玉ねぎ、その他にも野菜や調味料等々。独り暮らしをしてからはインスタント食品やパンなど、既製品しか無かった冷蔵庫に、さまざまな材料が並べられていく 「今日は親子丼なー」 「お前そんなの作れんの?」 「余裕」 馴れた手つきで片手で卵を割り、もう一方の手で片手鍋で湯を沸かす千尋が意外過ぎて驚く。 いやいやお前、慣れすぎだろ!! 特に出来ることもないだろうと諦めて、2人分のお椀を出した後はテレビを見るふりをしつつ、料理する千尋の姿を眺めていた 「おーい龍也、みりん取って」 みりん?……ってなんだよそれ。調味料か何かだったか? 「この家に無いのは知ってる。買ってきたから、そこの袋から取って」 まだ少し物が入ったままの袋を漁ると、みりんと書かれた黄色がかった液体の入ったボトルがあった 「これか?」 「そーそー、サンキュ」 既にいい匂いのする鍋に目分量でみりんを入れてかき混ぜ、一口味見をして卵をかけた 「うまそうだな…」 「うまいに決まってるだろ!」 ちょっと得意気に答える千尋がなんだか可愛らしく感じて、ぽんぽんと頭を撫でてやる 見た感じもう完成のようだ、ご飯くらい盛っておくか。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加