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午後6時……53分
チャイムの音に顔を上げると、もう約束の時間であることに気づいた。
開いてるぞと声をかけると、大きな買い物袋を2つ提げた千尋が入ってきた
「なんだよそれ」
「飯作ってやる。いつもろくなもん食ってないだろ」
冷蔵庫を勝手に開けて、「うわほぼ空じゃん」と文句を言いながら、手際よく材料を詰めていく
「頼んでねぇけど、助かる。金は?」
「いいよ俺も食うから」
卵、鶏肉、玉ねぎ、その他にも野菜や調味料等々。独り暮らしをしてからはインスタント食品やパンなど、既製品しか無かった冷蔵庫に、さまざまな材料が並べられていく
「今日は親子丼なー」
「お前そんなの作れんの?」
「余裕」
馴れた手つきで片手で卵を割り、もう一方の手で片手鍋で湯を沸かす千尋が意外過ぎて驚く。
いやいやお前、慣れすぎだろ!!
特に出来ることもないだろうと諦めて、2人分のお椀を出した後はテレビを見るふりをしつつ、料理する千尋の姿を眺めていた
「おーい龍也、みりん取って」
みりん?……ってなんだよそれ。調味料か何かだったか?
「この家に無いのは知ってる。買ってきたから、そこの袋から取って」
まだ少し物が入ったままの袋を漁ると、みりんと書かれた黄色がかった液体の入ったボトルがあった
「これか?」
「そーそー、サンキュ」
既にいい匂いのする鍋に目分量でみりんを入れてかき混ぜ、一口味見をして卵をかけた
「うまそうだな…」
「うまいに決まってるだろ!」
ちょっと得意気に答える千尋がなんだか可愛らしく感じて、ぽんぽんと頭を撫でてやる
見た感じもう完成のようだ、ご飯くらい盛っておくか。
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