ゆびきりげんまん

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以前、警察沙汰に巻き込まれてしまった時に、こちらは巻き込まれたほうなのに 警察に根ほり葉ほり聞かれたことを思い出したらとたんに面倒になった。 もうあんな面倒はごめんだ。 ぼくは黙ってその小指を厳重に新聞紙で包み、生ゴミと一緒に捨てた。 こんな嫌がらせをされるような覚えは全くないし、怖い。 見えない恐怖に身を震わせた。 それからしばらくして、地元の一番の親友から電話があった。 「おー、久しぶりー。元気だったか?結婚式、出てくれるんだろ?」 ぼくは開口一番言うと、友人は神妙な声でこう言った。 「うん、出席するよ。お前にちょっと報告なんだけど・・・・。」 友人はそこで何故か言いよどんだ。 「なんだよ、言いにくいことか?」 「・・・うん。実はさ、幼馴染の裕子って居たじゃん?あいつ、昨日、自殺したんだ。」 俺は衝撃を受けた。よく幼い頃、一緒に遊んだ記憶がある。 「そうなんだ・・・。なんで・・・・・?」 「よくわかんないんだ。俺3日前くらいに会ったときはそんな感じ、見受けられなかったんだけどさ。 あ、でも彼女、左手にすっごい包帯してたんだよ。手が開かないくらいぐるぐるに。 どうしたんだ、って聞いたら、ちょっと包丁で深く切ってしまって。でも縫ったから大丈夫、 って言ってたんだよね。で、自殺したあと、遺体を綺麗にするためにその包帯を取ったらさ、 左手の小指がなかったんだ。」 ぼくはそれを聞いて凍りついた。 ぼくに届いたメール便に入っていた小指。 左指ではなかったか? 何故?彼女が。 いくら考えてもぼくにはわからなかった。 ぼくは次の週、有給を取って実家に帰った。 裕子のお仏壇にお線香をあげるために。 裕子のお父さんもお母さんもよく知っているから、ぼくは本当に なんと声をかけて良いのかもわからなかった。 お葬式に出られなかったことを詫びると、こうして裕子に会いにきてくれただけでも 裕子は喜ぶと思うよ、とぼくに気をつかって、お線香でもあげてと 仏壇の前に案内された。 本当に、死んだのか実感が持てなかったけど、仏壇の中には裕子の笑顔があった。 内気で、あまり活発な子ではなかったから、ぼくは母に裕子ちゃんと仲良くしてあげて そう言われて、よく彼女を誘いに行ったのを覚えている。
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