ゆびきりげんまん

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ぼくはその次の日、自分の部屋に帰った。 部屋に明かりがついている。 あ、彼女が来てるんだ。 ぼくは幸せでいっぱいの気分になった。 部屋に待っててくれる人が居るって、ホント幸せだな。 ぼくは足取りも軽く、階段を駆け上った。 鍵を回すと逆に鍵が閉まった。 おいおい、鍵あけっぱなしかよ、無用心だなぁ。 そう思い、またぼくは鍵を逆に回し開錠した。 「おーい、鍵開けっ放しだったぞー、無用心だなぁ。ただいまー。」 ぼくは靴を脱ぎながら、玄関を入って行った。 何か部屋の中の様子が変だ。 椅子はひっくり返り、あちこちが荒らされている。 泥棒!彼女は無事か? ぼくは急いで奥のリビングのドアを開けた。 荒れた部屋の中央に置かれたソファーに、変わり果てた彼女の姿があった。 彼女の衣服は乱暴に引きちぎられあたりに散乱し、彼女は全裸だった。 肌には痛々しい暴行のあとがあり、何よりも酷いのは顔がボコボコに殴られて変形し 一瞬彼女とわからなかったのだ。 ぼくはあまりのことに気が動転して、立ちすくんだ。 彼女の名前を何度呼んでも反応は無かった。ぼくはすぐに救急車を手配し 警察にも連絡した。 彼女はすでに息絶えていた。 ぼくは号泣した。ぼくが留守にしたばかりに! 事件は強盗殺人として捜査された。彼女には何者かに暴行されたあとがあり 捜査の結果、過去に犯歴のある男が任意同行を受け、そのまま自白、逮捕となった。 ぼくは絶望に打ちひしがれた。 今、笑顔の彼女の位牌の前、抜け殻となっている。 通夜、葬式を終え、ぼくは途方にくれた。 どうしてこんな目に合うのだ。もう死にたくなった。 ぼくは彼女の遺影を抱き涙に暮れた。 そしていつの間にかぼくはその場で寝込んでいた。 しばらく眠っていなかった。つかの間のうたた寝。 「ゆーびきーりげんまん ねえ、知ってる?指きりの話はもうしたよね? げんまんってどういう意味か知ってる?」 ぼくは夢を見ているのか。 どうでもよかった。「知らない」と答えた。 「げんまんって、拳骨で1万回殴るって意味よ。」 そう言うと声はクスクス笑った。 ぼくは彼女のボコボコに殴られた顔がふと浮かんだ。 そしてぼくは怒りに震えた。 「ま、まさか。。。お前が、仕組んだのか! 裕子!」
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